アルツハイマー型認知症の特徴
アルツハイマー型認知症はもっとも多いタイプの認知症です。ドイツの精神科医であり脳の病理学者であるアロイス・アルツハイマーが発見し、1906年に最初の症例を発表しました。
以前は初老期に発病したものをアルツハイマー病、老年期に発病したものを老年痴呆と呼んで区別していましたが、今は両方ともアルツハイマー病もしくはアルツハイマー型認知症と呼んでいます。
症状はもの忘れが特徴的で、最初に見られることの多い症状です。アルツハイマー型認知症では記憶を司る脳の海馬に萎縮が起こります。そのため、もの忘れが現れます。症状はなだらかに進み、統計では約8年で最期を迎えることが多いです。高齢になるほどかかりやすいので、長寿である女性に多くみられる病気です。
アルツハイマー型認知症の人の脳には、老人斑(ろうじんはん)といわれる物質が広がり、脳の萎縮が進み認知症の症状が現れます。老人斑はベータたんぱくを主成分とするアミロイドという物質でできています。老人斑と萎縮があっても発症しない人もいます。
また、アルツハイマー型認知症の人の大脳皮質には、神経原線維変化という普通の人にはない糸くず状のものができているのも特徴的です。老人斑が現れるとタウたんぱくがたまり、それから神経原線維変化が現れます。
アルツハイマー型認知症の症状とその進行
アルツハイマー型認知症は、老年期に発病するケースがほとんどです。若年に発病することもあります。
アルツハイマー型認知症がたどる経過を紹介します。脳のダメージが広がるに連れて症状は悪化していきます。
初期
老化と間違えやすい時期です。最初に見られる症状は”もの忘れ”であることがほとんどです。
- もの忘れが見られるが、単なる老化と見分けがつかない。
- もの忘れはゆっくり進行する。始めのうちは自分で気づくが、だんだん自覚が薄れていく。
- 「いつものところにない」「盗まれた」と騒ぐことがありますが、日常生活にあまり支障はない。
- 感情表現が乏しくなる。
中期
問題症状が表面化する時期です。機能低下が全体的に進みます。だんだんと物盗られ妄想、徘徊、夜間せん妄(意識障害)、仮性作業、介護抵抗といったBPSD(周辺症状/行動・精神症状)が現れます。
- 今が何時なのか、今がどんな季節なのか、見当がつかなくなる。
- 過去の記憶は比較的残っているため、現在と過去の区別がつかなくなることもある。(自分の生年月日は言えるが、今の年齢が答えられないなど)
- 「会社に行く」「実家に帰る」などと言って外出し、徘徊が目立つようになる。
- 日常生活にも支障が出てくる。(服の着脱ができない、家事ができない、入浴ができないなど)
- 排尿・排便の失敗が多くなる。
- 病気の自覚がなく、人格が徐々に変化していく。
後期
介助が必要な時期です。
- 脳の萎縮が進み、会話が通じなくなる。
- 歩行がゆっくりになり、姿勢も保てず、前や左右に傾くようになる。
- 身体機能の衰えがさらに進むと、立位や座位が保てず、歩けなくなっていく。寝たきりが続くようなり、手足の関節が固く曲がっていく。
- 水や食べ物が飲み込めなる(嚥下障害)。
- 食べ物の認識ができなくなる。
- 食べ物や異物を気管に飲み込んでしまったり、食べ物でないものを消化器官内に飲み込んでしまう。(誤嚥)
- 誤嚥により肺炎を起こしやすくなり、死亡原因の一つになる。